映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「角川映画祭」その2~「汚れた英雄」

角川映画祭」その2~「汚れた英雄」
2016年8月6日(土)角川シネマ新宿にて。午後2時より鑑賞。

草刈正雄と言えば、今はさすがに年をとったとはいえ、往年のカッコよさが容易に想像できるだろう。そう。彼は昔はひたすらカッコいい男だったのだ。そんな彼を主演に据えた角川映画が、角川春樹自らが監督を務めた『汚れた英雄』である。ローズマリー・バトラーの歌う主題歌はけっこうヒットしたのでオレも覚えているが、作品自体は初見である。

SUGOサーキットでの全日本選手権ロードレース第8戦。バイクレーサー北野晶夫(草刈正雄)は、ライバルの大木圭史(勝野洋)にゴール直前で北野が追い抜かれて敗れる。二人のポイント争いは最終戦にもつれ込んだ。北野は天性の美貌を活かし、上流階級の女性をパトロンにして、レース費用を捻出していた。10億ドルの遺産を引き継いだ国際的なコングロマリットのオーナーのクリスティーン・アダムスにも接近する北野。そしてついに最終戦を迎える……。

まあ、はっきり言って草刈正雄のプロモーションビデオみたいな映画だ。そのぐらい徹頭徹尾、彼をカッコよく描いている。

ドラマ的な深みは何もない。暗い過去を背負った北野が、その美貌を武器にのし上がっていくという構図だが、人間ドラマが弱すぎるために、北野がただの軽薄なプレイボーイにしか見えないのだ。少なくともオレには。

だが、それでも見応えはあった。そのカギは映像だ。この映画の大半はバイクレースのシーンだ。その映像がハンパでない迫力なのだ。車載カメラによる映像なんて、今となってはさして珍しくもないが、当時としては画期的なことではなかったのか。おかげで、自分もレースに参加しているような気分になってしまった。バイク酔い一歩手前。

北野のプライベートライフを描くスタイリッシュな映像も印象的だ。映像を担当したのは、日本映画界の名カメラマンの1人、仙元誠三。さすがである。ちなみに、この日、上映前には彼のトークショーもあって、一緒に仕事をして監督や俳優などの興味深いエピソードをたくさん聞くことができた。

俳優陣も興味深い。レースシーンの実況を担当しているのがあの伊武雅刀。迫力ある映像と、あまりにも大げさな実況とのギャップに思わず苦笑してしまったのは、オレだけだろうか。その他、若き日の奥田瑛二浅野温子、そして異常に色っぽい木の実ナナなども目撃できる。

とにかくドラマなんか気にしないで、出色の映像と草刈正雄のカッコよさを堪能する映画である。これもまた角川映画