映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「パディントン2」

パディントン2」
TOHOシネマズ日本橋にて。2018年2月21日(水)午後7時10分より鑑賞(スクリーン1/E-10)。

ふだんは一人で映画を観るので、作品も自分一人で選ぶことになる。だが、ほぼ月に一度、仕事関係で知り合った2~3人と一緒に鑑賞する催しがある。その際には、上映中の映画のリストをオレが挙げて、他の誰かがそこから選ぶことが多い。そのため自分一人では観ないであろう作品が選ばれることもある。

今回もまたそんな映画がセレクトされてしまった。「パディントン2」(PADDINGTON 2)(2017年 イギリス)である。真っ赤な帽子をかぶった英国紳士の“パディントン”の活躍を描いたマイケル・ボンドの児童小説を実写映画化して、世界的な大ヒットとなった前作の続編だ。

ていうか、ただのクマのぬいぐるみ映画だろ。前作も観ていないし、イマイチ気が乗らないなぁ~。そんな気分で観たのだが、いやいや、これが素直に面白かったのである。

まず冒頭では、幼いパディントンが川を流されている時に、親切なクマの夫婦に拾われるエピソードを披露。前作を観ていないオレにも、パディントンの出自が理解できた。

そんなパディントン(声の出演ベン・ウィショー)はペルーの奥地からやってきて、イギリスのロンドンに住んでいる。ブラウンさん一家と幸せに暮らし、都会暮らしがだいぶ板についてきたところだ。そんなある日、大好きなルーシーおばさん(冒頭でパディントンを決死の覚悟で拾ってくれた女性)の100歳の誕生日プレゼントを探していたパディントンは、骨董品屋で世界に一冊しかない飛び出す絵本を見つける。その絵本を買うためにアルバイトを始めるパディントン

このパディントンときたら、見た目は小さくて可愛いものの、何ともドジなクマなのだ。理髪店のバイトでは、店主のいない間に大騒動を起こして首になり、新たに始めた窓ふきのバイトでもドタバタの連続だ。その様子が無条件に笑いを誘う。

パディトンが世話になっているブラウン家の個性的なキャラも笑いを誘う。「中年の危機」を迎えた父親、想像力豊かな母親、SLオタクだがダサいからと内緒にしている長男、失恋のショックを乗り越えて今は新聞作りに生きがいを見出す長女、口が悪くて不愛想な親戚のおばあさん。彼らのキャラはストーリーの伏線にもなっていて、最後にちゃんと回収されているから見事なものだ。

まもなく、プレゼント費用を稼ごうと奮闘するパディントンを嘲笑うように、骨董品屋に強盗が押し入り、絵本が何者かに盗まれてしまう。おまけに、現場に居合わせたパディントンは犯人と間違われて、逮捕されて刑務所に入れられてしまうのである。

いったい真犯人は誰なのか? それが初めからバレバレなのだ。絵本を盗んだのは、ブラウン家の向いに住む落ち目の俳優ブキャナン(ヒュー・グラント)。彼は、絵本にお宝の秘密が隠されていたのを知って、それを目当てに盗み出したのである。

しかし、真犯人がバレバレでも、いや、だからこそ、この映画の大きな魅力が生まれている。何しろ、あのヒュー・グラントの敵役としての大活躍ぶりが楽しめるワケだ。絵本に書かれたお宝のヒントを探るため、騎士や尼僧などに扮して大暴れ。おまけに出演しているドッグフードのCMでは、犬の着ぐるみまで身に着ける。二枚目イメージの強い彼が、嬉々としてこういう役を演じているので、観ているこちらまで楽しくなってしまうのだ。

パディントンが刑務所に入れられてからも、楽しい場面が満載だ。特に食堂のシェフを務める凶暴な囚人との関係を通して、超まずい刑務所の食事を改善する一件は、笑いどころが満載の楽しいエピソードだ。

同時にしんみりさせる場面もある。ブキャナンの家に侵入するためにユニークな策略をめぐらすなど、ブラウン家の人々は必死でパディントンの無実を証明しようとするのだが、その過程ではパディントンとのすれ違いが起きる。そのあたりでは思わず悲しい気分にさせられる。

終盤にはスペクタクルシーンまで用意されている。並走する列車を舞台にパディントン、ブラウン家の人々、ブキャナンが入り乱れて、ハラハラドキドキのシーンが続くのだ。まさか、ここで列車の上を走るヒュー・グラントの姿を見ようとは。ただし、そんな場面でも笑いは忘れない。ブラウン家の父親のヨガのネタにはまたまた大爆笑。

その後の水中でのシーンも印象的だ。絶対絶命の状況で哀愁を漂わせ。そこに思いもよらぬ助っ人を登場させる心憎い仕掛け。さらに、ラストはパディントンとルーシーおばさんとの強い絆を示して、ホッコリさせてくれる。

俳優陣では、ヒュー・グラントだけでなく、ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、ジュリー・ウォルターズ、ジム・ブロードベントブレンダン・グリーソンなども存在感ある演技を見せてくれている。そういえば、サリー・ホーキンスギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー主演女優賞にノミネートされたんだっけ。

いやぁ~、クマ映画だとバカにして申し訳ございませんでした。爆笑の連続に加え、アクションシーンやそこはかとない感動も用意された上質のエンタメ映画である。

さーて、満足満足。おっと、早まって席を立ってはいけないのだ。エンドロールには、またまた見せ場が用意されている。意外な場所でスポットライトが当たったヒュー・グラントが本当に楽しそうだ。最後までぜひお見逃しなく。

●今日の映画代、1400円。数日前に慌ててムビチケ購入。

◆「パディントン2」(PADDINGTON 2)
(2017年 イギリス)(上映時間1時間44分)
監督:ポール・キング
出演:ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンスブレンダン・グリーソン、ジュリー・ウォルターズ、ジム・ブロードベント、ピーター・キャパルディ、マデリーン・ハリス、サミュエル・ジョスリン、ヒュー・グラントベン・ウィショー(声の出演)、イメルダ・スタウントン(声の出演)、マイケル・ガンボン(声の出演)
*TOHOシネマズ日本橋ほかにて全国公開中
ホームページ http://paddington-movie.jp/