映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告」

「グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告」
2021年4月23日(金)TOHOシネマズシャンテにて。午後12時5分より鑑賞(スクリーン1/E-9)

~エグイけど笑っちゃう、おじいちゃんと孫のガチな戦争

東京は緊急事態宣言で、映画館の休業要請が出たとのこと。何の科学的根拠があって、そんなことをするのか。映画館でクラスターは発生していないぞ!小池百合子の頭の中はどうなっているのか。ろくな補償もなしに休めと言われても、小さな映画館はたまったものではないだろうが。

そんな怒りとは裏腹に、本日取り上げる映画は痛快コメディーである。ロバート・K・スミスの児童文学『ぼくはおじいちゃんと戦争した』(旧題『おじいちゃんとの戦争』)を「ガーフィールド2」「アルビン/歌うシマリス3兄弟」のティム・ヒル監督が映画化した。

そして主演はロバート・デ・ニーロだ。今年78歳になるデ・ニーロ。相変わらず元気な姿を見せてくれるのは、ファンならずともうれしいところ。

そのデ・ニーロの役どころは妻に先立たれたエド。セルフレジが導入されたスーパーで騒ぎを起こしたことから、娘の一家と同居することになる。そこには、娘サリー(ユマ・サーマン)とその夫アーサー(ロブ・グリル)、そして長女、次女、長男ピーター(オークスフェグリー)がいた。

孫のピーターは初めはおじいちゃんと暮らせることを喜んでいたが、自分の部屋がエドのものになり、自分は屋根裏部屋で暮らさなければいけないことを知り態度を急変。エドに手紙を書いて宣戦布告し、エドが部屋を明け渡すようにあの手この手で攻撃をしかける。

子供の宣戦布告だとバカにしてはいけない。これがなかなか過激で執拗な攻撃なのだ。「そこまでするか?」と驚かされることもしばしば。

それに応戦するエドだが、妻に先立たれたうらぶれた老人などと思ってはいけない。こちらも戦闘意欲に満ちあふれ、ドローンなどの最新機器を駆使して、ピーターの攻撃に堂々と応戦するのだ。

両者の攻防は基本的に家の中でのイタズラ合戦なのだが、予想もしない作戦が次々に飛び出す。その攻防の面白さでつい見入ってしまう。

祖父と孫の微笑ましい光景とは無縁。お互いに腹を探り合い、その真意はどこにあるのか考えながら相手を出し抜く。これはもう立派な戦争である。

とはいえ、そこはさすがに12歳の少年。完全な悪役にはなり切れない。おまけに、ピーターを演じるオークスフェグリーが可愛らしい顔をしているから、度が過ぎたイタズラも中和されるわけ。かたやデ・ニーロもお茶目な演技を見せているので、ひたすら楽しく笑えてしまうのだ。

この戦争、家族たちは何も知らない。そのため、2人の暴走が時として的外れの方向に走り、家族を戸惑わせる。それもまた笑いのネタとなる。

夫婦役のユマ・サーマンとロブ・グリルもいい味を出している。ユマ・サーマンは明るくひょうきんな母親なのに、なぜか娘のボーイフレンドを目の敵にするあたりは、かつての「キル・ビル」を彷彿させて面白い。

ついでに言えば、ピーターの姉はやたらに色気づいてボーイフレンドを家に引っ張り込むし、妹のほうは大好きなおじいちゃんのエドにベッタリ。その2人もドラマを盛り上げる。

さて、エスカレートする戦争を終わらせるため、エドとピーターはドッヂボール対決をする。そこでエドとチームを組むのが悪友ジェリー(クリストファー・ウォーケン)、ダニー(チーチ・マリン)、そしてダイアン(ジェーン・シーモア)である。

ちなみに、クリストファー・ウォーケンがデ・ニーロと共演するのは「ディア・ハンター」以来らしい。ロシアン・ルーレットが懐かしいぜ。

そして、ジェーン・シーモアはかつてのボンドガール。日本ではNHKが放送したTVシリーズ「ドクター・クイン/大西部の女医物語」の主役としても大活躍した。こちらも懐かしすぎるよなぁ。

彼らが子ども相手に本気でぶつかるドッヂボール対決は、迫力満点。体力的には厳しいものの、そこは頭を使いつつ応戦する。この高齢者軍団は、その他の場面でも大活躍する。元気印で輝く高齢者たちを観ているだけで、こちらも元気になってくる。

なかなか戦争終結には至らない中、ピーターの妹の誕生パーティーの日がやって来る。大規模な飾りつけをして大勢の招待客を呼ぶ豪華パーティーである。さすがにここは休戦協定を結ぶエドとピーター。だが、事態は思わぬ方向に向かう……。

最後の最後まで元気なエド。ラストシーンのピーターは、その元気さに圧倒されたかのような表情。やっぱり勝負はおじいちゃんの勝ちか!?

孫は可愛いもの、おじいちゃんは孫を可愛がるもの、という常識をひっくり返して、楽しいコメディーに仕上げている。驚くようなところは何もないが、安心して見られる映画である。

しかも、ふざけているばかりではない。終盤では戦争の愚かさを説いて、反戦の意思を軽く示してみせたりもする。

まあ、何よりも、デ・ニーロはじめ全キャストが、生き生きと楽しそうに演じているのがいい。エンドロールのNG集がそれを象徴している。

 

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◆「グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告」(THE WAR WITH GRANDPA)
(2020年 アメリカ)(上映時間1時間34分)
監督:ティム・ヒル
出演:ロバート・デ・ニーロオークスフェグリー、クリストファー・ウォーケンユマ・サーマン、ロブ・リグル、ジェーン・シーモアチーチ・マリン
*TOHOシネマズシャンテほかにて公開中
ホームページ https://grandpa-wars.jp/