「恋に至る病」
2025年10月30日(木)TOHOシネマズ 日比谷にて。午後4時35分より鑑賞(スクリーン6/B-7)
~内気な男子が恋した相手は……。風変わりで刺激的な恋愛映画

アイドルにはまったく疎い。長尾謙杜と聞いても「誰じゃ?そりゃ」という感じではあるのだが、何でも「なにわ男子」のメンバーらしい。その彼が主演を務めているのが「恋に至る病」という映画。SNSを中心に有名になったらしい斜線堂有紀の小説を、廣木隆一監督が映画化した異色の青春ラブストーリーだ。
映画は高校生の宮嶺望(長尾謙杜)と両親が、車で引っ越してくるところから始まる。これまで何度も親の転勤で引っ越してきた彼だが、これが最後の引っ越しだという。宮嶺は内気な性格で、度重なる転校のせいで友達もいなかったが、転校は人間関係をリセットするのに好都合だと強がる。
転校先の学校に登校した初日。クラスのみんなに自己紹介がうまくできない宮嶺を、寄河景(山田杏奈)が助ける。彼女は宮嶺の家のそばに住み、クラスの人気者だった。宮嶺が人の目を見て話せないのを知った彼女は、宮嶺の顔を自分に向けさせて、「やっと私を見てくれた」と話す。宮嶺はもうドキドキだ。
さらに、学校のみんなでボランティアで公園の清掃をした際に、景はケガをしてしまう。宮嶺は彼女をおぶって運ぶ。ここでもまた宮嶺はドキドキだ。こうして彼と景は急速に親しくなる。景は宮嶺に言う。「私のヒーローになって」。
景はクラスの人気者というだけでなく、みんなの頂点に立つリーダー的な存在であることが明らかになる。景が言うことにみんなが従う。
その後、宮嶺はいじめられるようになる。景と仲良くするのが気にいらない男子生徒たちの仕業だった。景はそれを知って彼らに抗議するが、跳び箱の中に閉じ込められてしまう。それを宮嶺が救う。
そんな中、世の中ではあるサイトのことが話題になっていた。ユーザーの若者に命令を下し、最後には自殺に追い込んでしまう恐ろしいサイトだった。
まもなく、宮嶺をいじめていた一人の根津原が死んでいるのが発見される。自殺らしかった。宮嶺は、もしかしたら景が問題のサイトのオーナーで、根津原を殺したのではないかと疑う。その後も、2人の周辺では高校生たちが何人も死んでしまうのだった……。
というわけで、最初はごくありふれた恋愛ドラマ風。ピンク映画出身で大ベテランの廣木隆一監督。「たしか70歳を過ぎているのに、よくこんな高校生の初々しい恋愛を描けるなぁ」と感心していたのだが、次第に雲行きが怪しくなってきた。謎の自殺誘導サイト、高校生の連続怪死などサスペンス的な要素が大きくなってくるのだ。まあ、いわば自殺願望や他人に病的に依存する傾向など、今時の高校生の生態を背景に、恋愛ドラマとサスペンスを融合させた世界を構築するのである。
その中で景という女性の得体の知れなさがクローズアップされるようになる。景と宮嶺の関係を象徴するエピソードがある。八景島シーパラダイスで2人がデートした際に、景はモノレールに乗って出かける。宮嶺は景に「近いから」と言われて自転車に乗ってその後を追いかける。これはもう完全に女性主導の関係である。うぶな宮嶺は完全に景に翻弄されていたのだ。
景はファムファタールなのか。悪女なのか。彼女によって複数の高校生が死に至らしめられたのは事実だが、直接手を下しているわけでもない。景に悪意があるのかないのか。原作を読んでいないせいもあって、それがよくわからない。宮嶺や同級生たちを翻弄するのも、意図したものなのか、そうではないのかが曖昧だ。
そのあたりも含めて、原作モノにありがちな消化不良の部分を感じたのは私だけだろうか。今時の高校生の生態もきちんと描かけているとは思えなかった。もう少し脚本を練り上げたほうが良かったのでは?(脚本は加藤正人と娘の加藤結子)
それでも終盤、警察のシーンでも、その後の後日談の場面でも、景に心酔しきっている宮嶺が怖い。前田敦子扮する刑事が言うように、もしかしたら全部が景によって仕組まれていたのではないか。宮嶺は完全に景に洗脳されているのではないか。そんな思いが頭から離れなかった。
まあ、恋愛というのは、洗脳みたいなところもあるにはあるからねぇ。そういう意味では、恋愛のある一面を捉えた映画と言えないこともない。と、オジサンは思うのだった。
宮嶺を演じた長尾謙杜の過去の出演映画は一本も観たことがない。とはいえ、少なくともこの映画に関しては、内気で景に翻弄されるという役柄がピッタリだった。
そして景役の山田杏奈は恐ろしいですな。24歳なのに完全に高校生で通用するんですから。しかも、可愛らしすぎるので、それが余計に景の得体の知れなさを増幅させる。「山女」や「正体」でも、なかなかの演技を見せていたが、この映画の彼女も実に魅力的である。
◆「恋に至る病」
(2025年 日本)(上映時間1時間49分)
監督:廣木隆一
出演:長尾謙杜、山田杏奈、醍醐虎汰朗、中井友望、中川翼、上原あまね、小林桃子、井本彩花、真弓孟之、忍成修吾、河井青葉、前田敦子
*TOHOシネマズ 日比谷にて全国公開中
公式ホームページ https://koiniitaruyamai.asmik-ace.co.jp/
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