映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「白の花実」

「白の花実」
2026年1月5日(月)新宿武蔵野館にて。午後2時40分より鑑賞(スクリーン2/B-6)

~新鋭監督による、思春期の心の揺れを繊細に描いた様々な要素を持つ映画

 

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
年末の入院以来、まだ本調子ではないものの、たまに映画館に行って2時間(たぶんそれぐらいが限界)座っている程度には元気になったので、久々に映画レビューをお届けします。

この日、新宿武蔵野館で観たのは「白の果実」という映画。新鋭・坂本悠花里による初の長編監督作品だ。

主人公は杏菜(美絽)という少女。周囲になじめず転校を繰り返してきた。いままた彼女はキリスト教系の全寮制の女子高に転校してくる。そこを舞台に不可思議な物語が綴られる。

その学校では毎年ダンスのイベントが行われていた。その練習を杏菜は見学する。そこでは美しい少女の莉花(蒼戸虹子)が踊っていた。その途中、杏菜はあらぬ方向に目を向ける。彼女には霊が見えるのだった。

杏菜は莉花とルームメイトになる。何もかも完璧に見える彼女を杏菜はうらやましがる。すると、莉花は「私になってみれば」と不思議なことを言う。そしてまもなく、彼女は屋上から飛び降りて死んでしまう。

莉花はなぜ死んだのか。残された日記には、彼女の笑顔の裏に潜んでいた苦悩や怒り、痛み、そしてある秘密が書かれてあった。

一方、莉花と仲の良かった栞(池端杏慈)も、なぜ莉花が死んだのか気になっていた。そんな中、最初は杏菜と距離を取っていた彼女だが、次第に杏菜に近づいていく。

本作は、ミステリー、ファンタジー、ホラー、青春ドラマ、社会派ドラマなど様々な要素を持つ映画だ。

例えば、莉花の魂が日記から青白く揺れる鬼火のような姿で現れ、杏菜に入り込んでしまうという展開がある。その魂に導かれて、杏菜は予想もつかない行動へと踏み出す。杏菜が霊が見えるという設定ともども、ファンタジー、あるいはホラー的な世界が現出する。

その一方で、終盤では、莉花の死の真相を巡って第三者委員会が設立され、生徒から聞き取り調査を行い報告会を開く。莉花の死の原因はいじめだったのか、あるいは日記にあった父親の存在によるものなのか。よくあるミステリーのように明確な結論を出すわけではないが、大人たちの事なかれ主義や隠ぺい体質に異議を唱えているのは明らかであり、現代社会と地続きの部分も多いドラマとなっている。

そして何よりも思春期特有の様々な思いが、実に繊細に描かれる。孤独な杏菜が同級生の死をきっかけに、栞という少女と出会い、距離を縮めたり反発しながら成長していく中で、彼女の揺れる心がスクリーンに映し出される。莉花や栞の微妙な心理も同様である。

映像も美しい。神秘的な森と湖、趣ある古い木造校舎、生徒たちや教師の衣装などを生かして、抒情的な映像を作り上げている。特に中盤に出てくるダンスの野外練習のシーンの美しさは、格別のものだ。

ラスト近く。そこで杏菜はダンスを踊る。それは彼女の成長を如実にスクリーンに刻み付けたもののように思えた。

主人公・杏菜を演じた美絽、栞役の池端杏慈、莉花役の蒼戸虹子の等身大で繊細な演技に加え、門脇麦、河井青葉、伊藤歩、吉原光夫ら実力派による大人たちのキャストも魅力だ。

青春ドラマに加えミステリー、ファンタジー、ホラー、社会派などと様々な様相を見せるドラマは、やや間口を広げ過ぎた感もあるが、坂本悠花里監督の才能を十分に感じさせる一作だ。次回作が楽しみである。

◆「白の花実」(WHITE FLOWERS AND FRUITS)
(2025年 日本)(上映時間1時間50分)
監督・脚本・編集:坂本悠花里
出演:美絽、池端杏慈、蒼戸虹子、河井青葉、岩瀬亮、山村崇子、永野宗典、田中佐季、伊藤歩、吉原光夫、門脇麦
*新宿武蔵野館ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中。全国順次公開
公式ホームページ https://www.bitters.co.jp/kajitsu/
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