「SING シング」
新宿ピカデリーにて。2017年4月20日(木)午後7時20分より鑑賞(スクリーン2/E-17)。
基本的に映画は一人で観る。別にそれがポリシーというわけではなく、一緒に観る相手がいないだけだ。ちっとも寂しくなんかないゾ!!(笑)
とはいえ、月に一度程度他人と一緒に映画を観ることがある。仕事を通じて知り合った映画好き3人とともに、自称「映画部」なるものを結成しており、そのメンバーで映画館に繰り出すのだ。もちろん鑑賞後は、感想を語り合う飲み会に突入する。
そこで問題になるのが作品選びだ。一応、最初はオレが目ぼしいものをピックアップして共有するのだが、上映スケジュールなどの関係で、予想もしない作品が浮上することがある。
今回の鑑賞作品も予想外のものだった。「怪盗グルー」シリーズや「ミニオンズ」のイルミネーション・エンターテインメントによるミュージカル・アニメ映画「SING シング」(SING)(2016年 アメリカ)である。
オレもなかなか面白いという評判は聞いていたのだが、もともとアメリカのアニメはほとんど観ないだけに(お金がないからそこまで手が回りません)、今回も自分から観ようという気は全くなかった。しかも、今回観ることになったのはオリジナル版ではなく、日本語吹替版だ。図らずも、こういう映画を鑑賞することになってしまうのが、グループ鑑賞の醍醐味かもしれない。
この映画のストーリーはシンプルだ。動物たちが人間と同じように暮らす世界。コアラのバスター・ムーンが支配人を務める劇場は潰れかけていた。バスターは劇場の再起を賭けて、歌のオーディションの開催を企画する。ところが、劇場で働くミス・クローリーのせいで募集チラシに2ケタ多い優勝賞金額が載ってしまう。おかげで劇場に応募者が殺到するのだが……。
落ちぶれた劇場支配人が、起死回生を狙ってオーディションを開く。ただそれだけなのに、あの手この手で楽しい映画に仕上げているから立派なものだ。全編を通して目を引くのは映像である。車の疾走シーンをはじめ、迫力あるシーンがテンコ盛り。もちろん動物たちの動きも、実に自然に仕上がっている。
ただし、登場人物(じゃなくて登場動物か?)のキャラ紹介と、ほんのワンフレーズ程度の歌が次々に披露されるオーディションシーンが中心の前半はやや退屈だった。小ネタで笑わせてくれるものの、物足りなさが残る。
それが中盤以降になると、俄然面白くなってくる。ユニークな面々のドラマが前面に出てくるのだ。25匹の子を育てるものの日常に飽き足らないブタさん主婦、歌は抜群に巧いのに極度のアガリ症のゾウ娘、父親に引き入れられたギャングの世界から足を洗いたいゴリラ青年、パンクロックを愛するハリネズミ・ガールなどの個性的なメンバーが、オーディションをきっかけに人生を変えようとするドラマ(=生き直しのドラマ)が展開するのである。
一方、劇場支配人のコアラにもドラマがある。スポンサー集めという難題が浮上し、大金持ちの元スターのおばあさんから、何とかお金を引き出そうとするものの、それがきっかけで大変なことが起きる。
それによってコアラはどん底に落ちるのだが、後半ではそこからの再起物語が描かれる(それには彼の亡き父との思い出なども絡んでくる)。これもまた定番とはいえ、それなりに観応えのあるドラマだと思う。
クライマックスは野外劇場での圧巻のショーだ。そこで披露される歌の素晴らしいこと。レディー・ガガ、ビートルズ、フランク・シナトラなど新旧のヒットソングが、心を湧き立たせてくれたり、感動を運んでくれる。それまでは前半でワンフレーズ披露される程度なので、なおさらクライマックスの歌が盛り上がる仕掛けになっている。
ちなみに、日本語吹替版のキャストは、内村光良、MISIA、長澤まさみ、大橋卓弥、斎藤司、山寺宏一、坂本真綾、田中真弓、宮野真守、大地真央、水樹奈々など。彼らの歌声もなかなか見事だ。
ていうか、MISIAや大橋卓弥の起用は反則でしょう(笑)。本職なんだから歌が歌いのは当たり前。むしろ印象的だったのは山寺宏一の芸達者ぶり。いやぁ~、本当に何でもできちゃう人だよなぁ。
ブタさん主婦の自己実現、ゴリラ青年の自立と父との絆の確認、ネズミ男(といっても妖怪ではない)のラブロマンスなど、様々な要素がポジティブに帰結して、ラストは大団円を迎える。誰でも温かな気持ちで映画館を後にできるはずだ。
シンプル過ぎるお話を、キャラの面白さを生かした小ネタと、過不足ない人間ドラマで盛り上げ、何よりも圧倒的な歌の魅力を見せつけてくれたミュージカル・アニメ映画。エンタメとしての完成度はかなり高いと思う。
それにしても、こうやって日本語吹替版を観たら、どうしてもオリジナル版が観たくなるではないか。オリジナル版のキャストは、マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、ジョン・C・ライリー、タロン・エガートンなどなど。彼らがどんな歌声を披露としているのか、気になるところである。
●今日の映画代、1500円。もう鑑賞券は売ってなかったのだが、新宿の金券ショップで招待券みたいなもの(株主向け?)を売っていたのでそれを利用。当日料金1800円に比べて300円節約!! でも、飲み代で吹っ飛んじまったぜ……。