映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「第30回東京国際映画祭」~その5

「第30回東京国際映画祭」~その5

昨日、10月30日は、雨もあがって気持ちの良い快晴・・・と思ったら、何だ、この凄まじい風は? 六本木ヒルズは完全な暴風。何度も歩いていて吹き飛ばれそうになり、通行規制までされる始末。

そんな中で、4作品を鑑賞。

「グレイン」コンペティション部門)
~ベルリン映画祭グランプリ受賞歴のあるトルコのセミフ・カプランオール監督の作品。ただし、英語劇。主演は「グラン・ブルー」のジャン=マルク・バール。温暖化などで荒廃し食糧不足になった世界を舞台にした近未来SF。種子遺伝学者であるエロールは、移民の侵入を防ぐ磁気壁が囲む都市に暮らしている。その都市の農地が原因不明の遺伝子不全に見舞われ、エロールは問題解決のカギを握る研究者アクマンを探す旅に出る。モノクロの静謐で壮大な映像が印象的。タルコフスキーキューブリックの映画を思い起こさせる。哲学的だったり観念的なところもあるが、地球の現状に対する問題意識は明確。

「さようなら、ニック」コンペティション部門)
~ドイツ映画だが、ニューヨークを舞台にした英語劇(一部ドイツ語)。モデルからデザイナーに転身中の女性ジェイド。夫ニックが姿を消して離婚を申し出た直後に、前妻マリアが現れて奇妙な同居生活が始まる。華やかなファッション界や超高級マンションを背景に、2人の女性の反目ぶりを中心に描くユーモアたっぷりの軽妙なコメディだが、それぞれの人物の心の葛藤や変化をキッチリとらえているのは、さすがに「ハンナ・アーレント」のベテラン女性監督マルガレーテ・フォン・トロッタだけある。

勝手にふるえてろコンペティション部門)
~昔の同級生に「脳内片思い」を10年間続けるOLのヨシカ。そんな中、会社の同僚からリアルに告白されたことから波乱が巻き起こる。絶滅危惧動物を愛し、屈折したイケてない日々を送る主人公のキャラを生かして、全編笑いが巻き起こる。コメディとしてのはじけ方がハンドでなく、ミュージカルまで飛び出す楽しさ。同時に、後半の主人公の混乱ぶりなどを中心に、青春や恋愛の本質も見えてくる。ロマンスとしての着地点も心地よく、主人公の成長も見える。大九明子監督の脚本・演出、主演の松岡茉優の演技、どちらも素晴らしい。文句なしに面白い!!

回転木馬は止まらない」(CROSSCUT ASIA部門)
インドネシア映画。ドライブするミュージシャンの3人の娘、亡妻が忘れられない男の異様な行動、強制移転に反対の活動をする男たちの悲惨な運命、エンストした車で幽霊のような男と遭遇する女性など、様々な人物を長回しで描いた群像劇。各エピソードは何を意味するのか? きっと監督たちにとっては深い意味があるのだろうが、正直オレにはさっぱりわからなかった。もしかしたら、人生や社会問題などについての深い考察が背景にあるのかもしれないが。それでもなんだか不思議な世界で、つい最後まで観てしまったのだった。

というわけで、コンペ作品の3本はどれも良かったのだが、「勝手にふるえてろ」はそれほど期待していなかっただけに、良い意味で裏切られた。松岡茉優の演技をまともに見るのは初めてだが、素晴らしすぎる演技だった。こんなに面白い映画を観たのは久々かもしれない。青春コメディとして絶対に観て損はない。12月23日より一般公開らしいのでぜひ。

ちなみに、上映後には大九明子監督、松岡茉優渡辺大知、石橋杏奈北村匠海による記者会見も拝見。

そして今日もオレは六本木へゴー!