映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」舞台挨拶付き上映

先週土曜の21日に、池袋HUMAXシネマズで「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を鑑賞した。

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そう。あの、大ヒットアニメ「この世界の片隅に」の長尺版である。前作に40分弱の新たなパートが加わっている。その中心となるのは、前作でもチラリと出てきた遊郭の女性りんと、主人公すず、その夫の周作との関係だ。原作の漫画ではそのあたりがきちんと描かれていたのだが、片渕須直監督は前作では、時間の関係などもあってあまりそこに深入りできなかったらしい。

今回、それがようやく実現した。さらに、遊郭のもう一人の女の子も登場して、すずと心を通わせる。そのおかげで、すずの人物像により深みが出て、ドラマの陰影もさらにクッキリとしたと思う。単なる長尺版と違い、前作とは異なる色合いを持った映画といってもいいだろう。

前作の魅力は戦時中の庶民の日常生活を生き生きと描き、それを通して戦争をはじめ様々なテーマ性を、ごく自然に観客に届けたところにあると思う。強いメッセージ性を持っていたり、反戦を声高に叫ぶ映画ではないからこそ、じわりじわりと観客に様々な思考を促す作品だったのである。

今作はそれがさらに強まったと思う。にもかかわらず、「反戦の思いが薄まった」というようなことを口にする人がいる。実は、朝日新聞にも似たような記事が掲載された。だから言ってるでしょうが。前作も今作も単純な反戦映画じゃないのヨ。すずさんという主人公をはじめ、戦時下を様々な思いと共に生きた人々をリアルに描き出した人間ドラマ。だからこそ、戦争に対する様々な思いが観客の中で渦巻くようになるわけだ。

しかも今回は遊郭の女性たちを描いたことで、貧困であったり、女性差別であったり、そうしたことにも自然に思いが向くのではないか。そういう点で、前作以上に社会に対して眼差しを向けさせる作品になっていると思うのである。

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ちなみに、前作を観た時に悔しかったのは、エンドロールのクラウドファンディングの協力者たちの名前。「ああ、あの中に自分の名前があったら」と残念至極だったのだが、今回、その思いが解消しました! 最後に映る応援チームのおびただしい数の名前の中に、オレの名前もあるのだ。やったぜ! あ、名前さらしちゃった。まあ、いいか。

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実は、21日に足を運んだのは舞台挨拶付き上映。ということで、片渕監督に加え、主演ののん、尾身美詞潘めぐみ新谷真弓牛山茂が登場。前から2列目ということで、至近距離でのんを目撃したのですが、きれいだし舞台映えしますねぇ(こちらは撮禁なので写真ナシですが)。

なお、また改めて鑑賞する予定なので、詳しいレビューはその時にでも。