映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「コンビニエンス・ストーリー」

「コンビニエンス・ストーリー」
2022年8月15日(月)テアトル新宿にて。午後12時10分より鑑賞(C-11)

~謎のコンビニを舞台にした謎だらけの怪映画

三木聡監督は見た目も怪しいのだが(失礼!)、作る映画やドラマもみんな怪しい。ドラマ「時効警察」シリーズ、映画「亀は意外と速く泳ぐ「転々」図鑑に載ってない虫」「インスタント沼」「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」などなど。みんなかなり癖のある個性派の作品なのだ。

「コンビニエンス・ストーリー」はその三木監督の新作。平易なタイトルとは裏腹に、謎に満ちたシュールな不条理ドラマである。日本映画の批評家のマーク・シリングという人が企画・考案し、三木監督自身が脚本を執筆した。

売れない脚本家の加藤(成田凌)は、恋人ジグザグ(片山友希)の飼い犬・ケルベロスに脚本執筆の邪魔をされたことから、腹立ちまぎれにケルベロスを山奥に捨ててしまう。だが、後悔した彼はケルベロスを探しに再び山に入る。

そこでレンタカーが突然故障し、加藤は怪しいコンビニ「リソーマート」で働く妖艶な人妻・惠子(前田敦子)に助けられる。惠子の夫でコンビニオーナーの南雲(六角精児)の家に泊めてもらった加藤だが、その時すでに現世から切り離された異世界に入り込んでしまっていた……。

まあ、とにかく何が何だかよくわからない映画だ。異世界への冒険譚ではあるものの、まさに不条理な世界。謎が謎を呼ぶものの、その答えが明らかにされることはない。その謎に何らかの意味があるのかないのかも、よくわからないままだ。まるでデビッド・リンチの世界である。

劇中の異世界で加藤と惠子は不倫関係に陥り逃亡を図るのだが、その逃亡先がこれまた怪しい温泉街で、そこでは「永遠(とわ)祭」なる不思議な祭りが行われている。このあたりも、何だかリンチ作品と共通する雰囲気である。

とはいえ、そこは三木監督。いつも通りのナンセンスな笑いが満載だ。序盤でケルベロスという犬が食べるドッグフードは「犬人間」という珍妙な名前。ちなみにキャットフードは「猫人間」という。

加藤の恋人のジグザグ(何という名前だ!?)が、ユニークなオーディションを勝ち抜いて獲得したのが、イクラを食べながら銃で撃たれるという役(映像はアート映画風)。

コンビニ店主の南雲は、毎日森に出かけてCDを流し、それに合わせて指揮をするのが習慣。

とまあ、「何だこりゃ」と失笑しそうなネタがいっぱい転がっているのだ。それ以外にも映画会社のプロデューサー、ジグザクが加藤とケルベロスの捜索を依頼する男など、奇妙奇天烈な人物が次々に登場し、ナンセンスな笑いを振りまいていく。

そうかと思えば、「いま私たちが見ている太陽は8分前の太陽なの。いま私が見ているあなたもほんのわずかだけれど過去のあなたなの」などという惠子のシリアスなセリフが飛び出したりもする。

その一方で、ホラー映画的な要素もある。加藤はかつてあったという怪事件を素材に脚本を書く。その脚本はプロデューサーに絶賛されるが、南雲によれば惠子はその事件の生き残りだという。

南雲と惠子夫妻との奇妙な三角関係へと発展していく加藤。クライマックスはあわやの展開。命からがら脱出した加藤が目にしたのは……。

というわけで、最後まで何が何だかよくわからない。観客が自分で勝手に判断するしかない。そういう意味では不親切極まりない映画なのだが、これもまた映画には違いない。

まあ、個人的には予想もつかない摩訶不思議な展開と、ナンセンスな笑いに引きずられて、けっこう飽きずに最後まで見てしまったのだが。

主演の成田凌のダメ男っぷりもなかなか堂に入っているが、前田敦子ファムファタール的な人妻役が絶品。いやいや、加藤ならずともあの怪しい魅力には抗えませんよ。ヤバすぎます。

片山友希のはっちゃけた演技も存在感十分だし、六角精児、岩松了、渋川清彦、ふせえり、松浦祐也らの怪演も見もの。みんな嬉々として演技している。

評価は分かれるだろうし、誰にでもススメられる映画ではないが、三木監督のファンならずともツボにはまれば楽しめそうである。

◆「コンビニエンス・ストーリー」
(2022年 日本)(上映時間1時間37分)
監督・脚本:三木聡
出演:成田凌前田敦子、片山友希、六角精児、岩松了、渋川清彦、ふせえり、松浦祐也、BIGZAM、藤間爽子、小田ゆりえ、影山徹、シャラ・ラジマ
テアトル新宿ほかにて公開中
ホームページ http://conveniencestory-movie.jp/ 


www.youtube.com

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村