映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「新感染半島 ファイナル・ステージ」

「新感染半島 ファイナル・ステージ」
2020年12月30日(水)TOHOシネマズ池袋にて。午後1時55分より鑑賞(スクリーン8/D-5)

~前作とは異質なハリウッドも顔負けのアクション大作

いやぁ、年末はたいてい暇なので今年も映画館に通いつめようと思ったら、とんでもない。急に仕事が入ってきて、映画館どころではなくなってしまった。ブログもなかなか更新できずにいたのだが、ようやく年末駆け込みで一本観たので、その感想を……。

韓国で大ヒットを記録し、日本でも話題を呼んだゾンビパニック映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」。その続編が「新感染半島 ファイナル・ステージ」だ。監督・脚本は引き続きヨン・サンホが担当しているが、キャストは一新されている。

前作は高速鉄道KTXの車内で繰り広げられる壮絶なゾンビとの戦いを描いた作品。密室という閉塞状況がゾンビの恐怖を煽り立てていた。しかし、本作はまったく違う映画だ。

主人公は軍人のジョンソク(カン・ドンウォン)。冒頭で彼は姉の家族を船に乗せてゾンビのいない日本に脱出させようとする。だが、船内でゾンビの感染者が発生し、姉とその子供を失ってしまう。

それから4年、香港で廃人のように暮らしていたジョンソクは、ある日、裏社会の人間から仕事の依頼を受ける。それは、完全封鎖されている半島に潜入し、大金を積んだトラックを見つけ出し、回収してくるというもの。依頼を引き受け3人の仲間とともに半島への上陸を果たすジョンソク。

だが、そこに待っていたのは大量の凶暴化した感染者の大群。そして、狂気の民兵集団631部隊だった。民兵集団によりトラックを奪われてしまったジョンソク。そんなジュンソクを窮地から救ったのはミンジョン母娘だった。

最初にジョンソクたち4人組が登場したので、てっきり彼らがそれぞれの個性を発揮して作戦を遂行するのかと思いきや、そのうちの2人は意外にあっさりと殺されてしまう。もう1人(ジョンソクの義兄)も631部隊に捕まってしまうのである。

その代わりに大活躍するのがミンジョン母娘だ。最初はジュニ(イ・レ)とキム(クォン・ヘヒョ)の姉妹がジョンソクを救う。ジュニときたら子どもだてらに車をぶっ飛ばし、凄まじいカーアクションを見せる。一方妹のキムはラジコンカーを巧みに操り、敵を翻弄する。

母ちゃんのミンジョン(イ・ジョンヒョン)も負けていない。終盤では圧巻の20分越え(?)のカーアクションが登場。わずかでも目を離せば、訳がわからなくなりそうだ。とにかくものすごいスピードで右に左にトラックを操り、ゾンビどもをやっつけるだけでなく、631部隊の連中とも戦うのだ。そこに再び娘も参戦。母娘共演のカーチェイスとなる。

ジョンソクも黙ってはいない。派手なガンアクションを展開する。バリバリバリとゾンビを撃ち倒し、631部隊の連中も乱射する。さらにミンジョンも銃を手に撃ちまくる。いったい何発撃ちまくったのだろう。この人たち。

このカーアクションとガンアクションこそが、本作の最大の魅力である。そのスケール感はハリウッド映画と比べても遜色がない。

その分人間ドラマは薄味だ。この任務に就く前のジョンソクは姉たちを失い廃人同然。おまけにミンジョン親子は、冒頭でジョンソクが感染を疑って救出を断った家族なのだ。そんなジョンソクがどう変化するか。そんな人間ドラマは残念ながらあまり見られない。

とにもかくにも徹頭徹尾アクションにこだわった映画だ。631部隊の内部では仲間割れも起きている。そして、「マッドマックス」も真っ青のアトラクションもある。ゾンビと捕虜を闘わせるゲームだ。ジョンソクの義兄もその渦中に投げ込まれる。

終盤では親子の絆のドラマが生まれる。まさかの救いの手が来るものの、ミンジョンはケガをしてしまう。そこで、ジョンソクに娘たちを託して自らは犠牲になろうとする。泣き叫ぶ娘たち。あまりにも哀しい場面である。

しかし、しかしである。そこであり得ないことが起きるのだ。ミンジョンはもちろん、ジョンソクも、信じられない行動に出るのである。

リアルさを重視する観点から言えば、とんでもない終盤の展開だ。だが、「そこまでするか」の波状攻撃は、いかにも韓国映画らしくて潔い。面白いでしょ? 感動できるでしょ? と言われたら、確かにその通りなのだ。

主演のカン・ドンウォンは哀しげな目が印象的。あの目のおかげで薄味な人間ドラマがカバーされたのではないか。そしてイ・ジョンヒョンのたくましさも特筆もの。とはいえ、個人的にはイ・レとクォン・ヘヒョの子役2人が何よりも素晴らしかった。韓国の子役はうまい子が揃っているが、この子たちもなかなかのものだ。

最初から最後まで途切れない緊張感。ハリウッド顔負けのアクション大作として観応えは十分だ。ただし、前作の「新感染 ファイナル・エクスプレス」のことは意識しないように。あくまでも設定を借りただけの異質な映画として観るべき作品である。

*今年も一年ご愛読ありがとうございました。これが今年最後のブログになると思います。来年も何卒よろしくお願いいたします。

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◆「新感染半島 ファイナル・ステージ」(PENINSULA)
(2020年 韓国)(上映時間1時間56分)
監督・脚本:ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォンイ・ジョンヒョン、イ・レ、クォン・ヘヒョ、キム・ミンジェ、ク・ギョファン、キム・ドユン、イ・イェウォン
*TOHOシネマズ日比谷ほかにて1月1日より公開(先行公開中)
ホームページ https://gaga.ne.jp/shin-kansen-hantou/