映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「告白、あるいは完璧な弁護」

「告白、あるいは完璧な弁護」
2023年6月23日(金)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後12時より鑑賞(スクリーン8/d-6)

~「予測不能」な容疑者と弁護士の対話。二転三転する展開に目が離せず

「予測不能」というフレーズが、これほどピッタリくる映画はないだろう。韓国製サスペンス・スリラー「告白、あるいは完璧な弁護」である。

IT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)は、不倫相手であるキム・セヒ(ナナ)がホテルの密室で殺された殺人事件の容疑者となってしまう。無実を訴える彼は、100%無罪を勝ち取るといわれる敏腕弁護士のヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自分の潔白を証明してほしいと依頼する。シネは無罪になりたいならすべてを正直に話せと迫る。やがてミンホはかつて起きたある交通事故について語り始める……。

元ネタは2016年のスペイン映画「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」らしいが、ユン・ジョンソク監督が大幅に改変し、独自の脚本に仕上げている。

この映画を観る時には、あらゆることに注意を払い、すべてを疑って観たほうがいい。そうでないと、見事にだまされることになるだろう。冒頭のヤン・シネの電話のやりとりから、すでにそこにはトリックが仕掛けられている。

ドラマの基本は、雪深い別荘でのミンホ社長とシネ弁護士の会話である。密室殺人の犯人とされ保釈中のミンホのもとに、会長の紹介で敏腕弁護士のシネがやって来る。2人は問題の密室殺人に加え、それと関係しているらしい交通事故について語り合う。

まず密室殺人に関しては、自分と不倫相手の他に第三者がいたとミンホは主張する。また、その前に起きた交通事故についても、不倫相手が車を運転して起こしたものであり、その隠蔽工作も不倫相手が主導して行ったと主張する。だが、それを証明する証人はいない。

それに対して、シネ弁護士は自身の推理を提示する。無罪になるには創造力が必要だと語る彼女は、ミンホの主張とは異なる事実を語る。

そして、その両者の語る過去の出来事がそれぞれ映像化される。つまり、ミンホの主張とシネの推理に沿って、別々のパターンの事件の顛末が描かれるのである。その別々の映像が錯綜し、観客を混乱に陥れる。

ミンホとシネの対話は迫力満点だ。いかにも切れ者のIT社長のミンホだが、彼の証言にはウソが混じっている。それはもちろん自分の身を守るためのウソだ。それに対してシネもウソをつく。彼女は無罪になりたいなら真実を話せと迫り、そのためにウソをつくのである。両者のギリギリの心理戦が展開される。

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうが、密室殺人事件のポイントを挙げるなら、現場に第三者はいたのか。いたならそれは誰なのか、である。そして交通事故を主導したのはミンホかセヒか、その事故で行方不明になった青年はどうなったのか、といったあたりだろう。

そして、そこで浮上するのがある意外な人物たち。それが誰かと言えば……。

おっと、危ない、危ない。これ以上はやめておこう。しかし、まあ、ストーリーそのものが全部ネタバレみたいな映画なので、説明するのが難しいったらありゃしない。

とにもかくにも謎が謎を呼び、二転三転する展開。いったい何が真実で何がウソなのか、まったくわからなくなってくる。確かなのは無実を勝ち取りたいミンホが必死でシネの説得を試み、シネは自身の敏腕ぶりを証明するかのように自説を繰り出す。被疑者VS弁護士の凄まじい攻防が展開されることである。

む? 被疑者VS弁護士?

終盤、「何か怪しい」と思い始めたタイミングで、衝撃の事実が発覚する。この映画最大の驚きの場面だ。思わず「ええっ?」と叫びそうになった。

そして、そののちもスリリングな展開を繰り出して飽きさせない。しかも、最後にはまたまた驚きのどんでん返しが登場するのだ!

森と湖というロケーションなど緊迫感を高める仕掛けも抜かりなし。よくもまあ、こんな映画を作るものだ。細部にはツッコミどころもありそうだが、観ている間は文句なしに面白かった。

IT社長役のソ・ジソブは、一見善良な感じだが、その裏では……というあたりをうまく表現。そして、敏腕弁護士役のキム・ユンジンのしたたかで、激情を押し隠す演技が絶品。個人的に、この人の若い頃からの演技を観ているが(「シュリ」とか)、年齢ごとに実に良い演技を披露している。

これぞ驚愕のサスペンス・スリラー。最近のこの手の映画の中でも出色な出来だ。あなたもきっと、だまされる快感に酔いしれるはず……。

◆「告白、あるいは完璧な弁護」(CONFESSION)
(2022年 韓国)(上映時間1時間55分)
監督・脚本:ユン・ジョンソク
出演:ソ・ジソブキム・ユンジン、ナナ、チェ・グァンイル
シネスイッチ銀座ほかにて公開中
ホームページ https://synca.jp/kokuhakuaruiwa/

 


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