映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「おとなの事情 スマホをのぞいたら」

「おとなの事情 スマホをのぞいたら」
2021年1月10日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時50分より鑑賞(スクリーン6/D-8)。

~日本流のアレンジがほどこされたイタリア映画の日本版

イタリアで大ヒットした映画「おとなの事情」。パーティーに集まった7人の男女が、それぞれのスマホに届いたメールや電話を全員に公開するというゲームを始めたところ、とんでもない秘密が次々に露呈していくというドラマ。その日本リメイク版が「おとなの事情 スマホをのぞいたら」である。

年に1度集まっている3組の夫婦と1人の独身男性。今年はある月食の夜に集まって、旧交を温め合うことになっていた。ところが、ひょんなことから参加者のひとりが、それぞれのスマホに届くメールと電話のすべてを全員に公開する、というゲームを提案する。後ろめたいことは何もないと、この提案を受け入れた一同だったが、実は全員が絶対に知られたくない秘密を抱えていた。スマホに着信があるたびにパーティーは修羅場と化していく……。

基本的な設定はオリジナル版と同じ。ただし、リメイクにもお国柄が現れるようだ。日本版の脚本は岡田惠和が担当。冒頭でそれぞれのキャラクターをコンパクトにまとめて、その後のドラマにつなげている。

お調子者の夫・向井幸治(淵上泰史)とそんな夫に不信を抱く妻の杏(木南晴夏)の新婚夫婦。美容整形医の夫・六甲隆(益岡徹)と精神科医の妻・絵里(鈴木保奈美)のセレブ夫婦。3人の子どもと義母を抱えた園山薫(常盤貴子)と夫の零士(田口浩正)の倦怠期の夫婦。そして塾の講師をしている独身男・小山三平(東山紀之)。

スマホを公開しようという提案をしたのは杏だ。そこには浮気性の夫の幸治に対する疑念がある。それに対して、全員が同意する。ただし、その同意の仕方には濃淡がある。最後まで抵抗していたのは零士だ。それでも結局、全員のスマホがテーブルの上に置かれる。

最初に電話がかかってきたのは三平だ。転職活動をしているという彼に合格の報せが入る。だが、嬉しい知らせはそれだけだった。その後は次々と通知音や着信音が鳴り始め、夫や妻、友人の秘密が暴露されていく。

それは同性愛や不倫などのありふれたネタだ。とはいえ、全員のキャラが明確だからなかなか面白い。秘密が暴露された人々は、言い訳をすればするほど墓穴を掘る。その姿が笑いを誘う。次はどんなネタが飛び出すかと興味津々で見入ってしまった。

ただし、不倫をきっかけに隆と絵里夫婦のいい話に持っていこうとするのは、いささか強引なのでは? いや、そもそもあんなに簡単に不倫を許せるものなのか? 何だか、とってつけたような理屈で納得させようしているが、それでいいのか?

ラストも問題だ。実はこのメンバーが毎年集まるのには理由があって、彼らはかつてともに過酷な経験をしたという過去を持つ。その原点に立ち返って、今後もこの回を続けることを話し合うのだが、それがいかにも日本的というか、情感たっぷりに描かれるのでシラケてしまった。あれだけ色々なことがあったのに、何もなかったかのように大団円を迎えるのには違和感ありありである。日本的といえばあまりにも日本的なリメイクなのだった。

その挙句に、みんなで思い出のコンビーフ缶を料理されてもなぁ~。

しかし、まあ、細かなところに目をつぶれば面白いのは確かである。今やスマホはもう一つの人格。そこには秘密もたくさんある。そんな世相だからこそ、オリジナル版の面白さが際立ったのだろう。終盤は日本的な展開に突入したとはいえ、それまでの大筋はオリジナル版を踏襲しているからハズレはない。

そして本作で忘れてならないのが超豪華俳優陣の共演。東山紀之常盤貴子益岡徹田口浩正木南晴夏淵上泰史鈴木保奈美。各人が「いかにも」という感じの役を演じている。これだけのキャストが揃えば楽しい映画になるのも道理である。

ちなみに「おとなの事情」は世界18カ国でリメイクされたそうなので、各国のリメイクを見比べるのも面白いかもしれない。

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◆「おとなの事情 スマホをのぞいたら」
(2020年 日本)(上映時間1時間41分)
監督:光野道夫
出演:東山紀之常盤貴子益岡徹田口浩正木南晴夏淵上泰史鈴木保奈美室龍太桜田ひより
*TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中
ホームページ https://www.otonanojijo.jp/