「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」
2022年10月27日（木）シネクイントにて。午後2時10分より鑑賞（スクリーン1／Ｈ－7）
～会社の社内で毎日が繰り返される。新感覚のタイムループもの
同じ時間を繰り返すタイムループものの映画は、吐いて捨てるほどある。その中で目立つには斬新な切り口を提示するしかない。
「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」は、タイトル通りにタイムループものの映画。だが、他とはちょっと違う。タイムループと会社ネタを結び付けているのだ。
この映画は「CHOCOLATE」という企画クリエイター集団の作品で、ドキュメンタリー映画「14歳の栞」に続く劇場映画第2弾とのこと。監督も「14歳の栞」の竹林亮が務めている。
小さな広告代理店で働く吉川朱海（円井わん）は、徹夜明けで会社のデスクで目を覚ます。彼女は、大手広告代理店からの難しい要求に応えようと必死だった。しかも、その大手広告代理店から声がかかり、朱海はこの仕事が終わったら転職しよう考えていたのだ。
その他の社員もみんな忙しく、泊まり込みで仕事をする。唯一、永久部長（マキタスポーツ）だけが、お気楽な毎日を送っている。
そんなある月曜日の朝、朱海は、2人の後輩から衝撃の事実を告げられる。自分たちが同じ一週間を繰り返しているというのだ。確かに、よくよく考えてみれば同じことを繰り返している。クライアントからの電話、窓に衝突するハト、突然の停電……。
やがて、ほかの社員たちも次々にタイムループに気づき始める。そこから脱出するカギを握るのは永久部長。だが、部長に気づいてもらうのは至難の業。社員たちは、どうにかして部長に気づかせようとするのだが……。
というわけで、毎週同じような会議をしたり、同じような仕事をして、タイムループのような感覚に陥る人も多いのではないだろうか。それを地で行く映画である。
舞台はすべて会社の社内。そこで起きる出来事は会社あるあるが満載だ。部長を説得するのに直接では効果がないと判断して、下っ端から上司へと順々に説得する。部長の説得は、パワーポイントを使ったプレゼンで行う。そんなネタは、会社勤めの経験がある人なら「なるほど」と思うのではないか。
おまけに、それを笑いに包んで描く。本作の基本は爆笑コメディー。ブラックだったり、シュールだったり、大仰だったりと多彩な笑いが炸裂する。テンポも軽快だし、アイドルの楽曲を使うなどポップなタッチも目につく。
タイムループものなので何度も同じ日が描かれるわけだが、それでも飽きることはない。同じ出来事を違う視点で見せたり、それまで描かれなかった出来事を登場させたりと、いろいろと工夫している。
何度もタイムループを繰り返すうちに、次回は失敗を生かして挽回するという展開も面白い。例えば、朱海は最初はプレゼンに出かける途中に事故に遭って負傷するが、それを何度も繰り返すうちに事故を避けるようになる。突然の停電も何度も繰り返すうちに慌てなくなる。
それにしても笑えるのは笑えるけれど、これといった人間ドラマがないなぁ。と思い始めたころから、次第にエモーショナルな展開に突入していく。
部長の「中年の危機」がタイムループの原因だとわかり、部長がはめている腕輪を自ら破壊させようとする社員たち。ところが、実はタイムループを抜け出すカギは別のところにあったのだ。それは部長の若き日の出来事に関係していた。
社員たちはタイムループを抜け出すために、ある共同作業をすることになる。それを通して、朱海は自分のことしか考えていなかったことに気づき、仲間の協力の大切さを知ることになる。まあ、ありがちなのは確かだが、それでもちゃんとした人間ドラマが用意されているのだ。
そして、最後は部長のサポートのもと、朱海は仕事への向き合い方を見つめ直していくのである。
主演の円井わんの演技は初めて見たが、なかなかいい味を出している。今後注目の俳優だと思う。その他の役者たちもマキタスポーツはじめ、この映画のテイストにピッタリの演技だった。ほとんど電話の声で出演した池田良（数々の映画に出演）の存在感も光っていた。
新感覚のタイムループもののコメディーだ。かなり笑える上に最後は人間ドラマもきっちり入れ込んでいるあたり、なかなか巧みな脚本である。この手の映画では上出来の部類といえるだろう。
ちなみに、エンドロール後にもお楽しみ映像が流れるので、最後まで席を立たないことをお勧めします。
◆「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」
（2022年 日本）（1時間22分）
監督：竹林亮
出演：円井わん、マキタスポーツ、長村航希、三河悠冴、八木光太郎、高野春樹、島田桃依、池田良、しゅはまはるみ
＊シネクイントほかにて公開中
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