「犯罪都市 THE ROUNDUP」
2022年11月5日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時30分より鑑賞(スクリーン9/D-11)
~マ・ドンソクの魅力が全開の理屈抜きで楽しめるアクション映画
マーベル・スタジオのアクション大作「エターナルズ」に出演するなど、世界的に活躍する韓国俳優マ・ドンソク。アクションスターとして強いのは当然だが、真ん丸の顔と体型でどこか愛らしさを感じさせるのも魅力だ。
そのマ・ドンソクが主演している犯罪アクション映画が「犯罪都市 THE ROUNDUP」だ。2017年製作の「犯罪都市」の続編だが、前作を観ていなくても楽しめると思う(私も観ていません)。
クムチョン署の強行犯係に所属する刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)は、その剛腕で犯人をボコボコにして問題になっていた。そんな中、ソクトは国外逃亡した容疑者を引き取るためベトナムへ行くように命じられる。チョン・イルマン班長(チェ・グィファ)とともに現地に向かったソクトは、容疑者から冷酷な犯罪者カン・ヘサン(ソン・ソック)の存在を聞き出すと、正義感を抑えられずにベトナムの法律を無視して捜査に乗り出すのだが……。
今回もいつもながらのマ・ドンソクの世界が全開だ。何といってもアクションシーンが魅力。相手はナイフを持つなど武器を手に襲ってくることが多いが、ソクト刑事はほぼ素手で戦う。殴る蹴るで相手をなぎ倒すのだ。とにかくムチャクチャに強い。そのアクションの爽快感ときたら半端ではない。
おまけにソクト刑事はコンプライアンスなど無視だ。取り調べでは当たり前のように暴力をふるい。相手を脅して供述を引き出す。逮捕の時にもできるだけ犯人を傷つけずに……などという気遣いとは無縁だ。本当にこんな刑事がいたら大問題である。
しかし、それをマ・ドンソクが演じるとなぜか許せてしまうのだ。相手を威嚇しても、持ち前の愛らしさでなぜか憎めない。むしろ微笑ましささえ感じてしまうから不思議だ。思うにこの愛らしさは、俳優マ・ドンソクが演じているのではなく、一人の人間として持っている個性なのではないだろうか。でなければ、あれほど自然ににじみ出てくるものではないと思うのだが。
アクションシーンはかなりエグい。過激なバイオレンスシーンもたびたび登場する。凶悪犯たちによる殺人は、惨殺といってもいいぐらい無残な殺し方である。だが、それが適度な笑いによって中和される。
特にソクト刑事とヘサン班長のやりとりには、何度も爆笑させられてしまった。ヘサン班長はお調子者で、英語ができるふりをしてベトナムに同行する。また、ソクトとコントのような小芝居を演じて署長をうまく丸め込む。まさに迷コンビである。
こうした笑いとシリアスの配合が絶妙だから、バイオレンスシーンもそれほど目を背けずに済むのである。
監督は前作では助監督を務め、本作で記念すべき監督デビューを飾ったイ・サンヨン。さすがにわかっていらっしゃる。
凶悪犯のヘサンと警察のバトルに加え、息子を殺された金融会社社長(裏社会と通じている)、彼に雇われた殺し屋集団、不法滞在者のチンピラ、金融会社社長の後妻などが入り乱れて、途中からは舞台が韓国に移る。
後半になってもアクションは失速しない。終盤はカーアクションや狭い通路での大乱闘なども飛び出し、多彩なバトルが次々に登場する。特に現金を積んだ車をめぐる追跡劇はかなりの迫力だ。
悪党の大ボスであるヘサンとソクト刑事の直接対決は、二度ある。最初は激しい戦いの末に、ヘサンが逃げ出す。そして、二度目は終盤でのバスの中での大立ち回りだ。こちらも迫力満点。ソクト刑事の一本背負いが鮮やかに決まる。
ヘサン役のソン・ソックは、Netflixドラマ「私の解放日誌」に出演しているらしいが、いかにも冷酷で人を人とも思わない凶悪さが際立っていた。思わず背筋がゾクゾクするほど恐ろしい演技である。
まあ、冷静に考えればおかしなところもけっこうある。例えば、危険な敵のアジトに刑事一人で乗り込むあたりは、「それはないだろう」とツッコミを入れたくなってしまった(実際に、やられてしまうし)。でも、それを言ったらおしまいなのがこの映画。野暮なことは言わないでおこう。
まさに無敵。メガトン級に強くて愛らしいソクト刑事=マ・ドンソクの大活躍が楽しめれば、それでいいのだ。そういう意味で問答無用、理屈抜きで楽しめる映画なのであった。
◆「犯罪都市 THE ROUNDUP」(THE ROUNDUP)
(2022年 韓国)(上映時間1時間46分)
監督:イ・サンヨン
出演:マ・ドンソク、ソン・ソック、チェ・グィファ、パク・ジファン、ホ・ドンウォン、ハジュン、チョン・ジェグァン
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中
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