映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「非常宣言」

「非常宣言」
2023年1月6日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時35分より鑑賞(スクリーン6/D-10)

~異様な緊迫感の波状攻撃。旅客機内でのバイオテロの恐怖

相変わらずコロナが収まらない。何でも日本は、昨年12月26日から今月1日までの週間感染者数が世界最多だったらしい。

だからこそ、なおさら怖い映画が公開になった。韓国映画「非常宣言」である。よくある飛行機パニックものの映画だが、そこにバイオテロという要素を盛り込んで、異様な緊迫感を生み出すことに成功している。

まず映画の冒頭では、タイトルの「非常宣言」について、それがどのように意味を持つのかを簡潔に説明する。

そしてドラマが始まる。そこで気になるのは、早いうちから怪しい男が登場すること。航空会社のカウンターで、ある男が係員に対して奇妙な態度を取る。最後は悪態をついてその場を離れる。こいつ、きっと何かやらかすな。

と思ったら、何のことはない。こいつがバイオテロの犯人なのだ。普通この手の映画では、少なくともドラマの中盤まで犯人をバラさないのが鉄則。だが、この映画は飛行機が離陸する前から犯人がわかっているのだ。

しかしまあ、皆さん、ガッカリする必要はありません。犯人はわかっていても、面白さが消えることはありません。いや、むしろ犯人探しの要素を排除したことで、とびっきり緊迫感のある展開に持ち込んでいるのである。

というわけで、まもなくKI501便が離陸する。そこには、乗組員として副操縦士のヒョンス(キム・ナムギル)がいた。そして乗客には、娘とともにハワイへ向かうべくジェヒョク(イ・ビョンホン)の姿が。彼は飛行機恐怖症だという。

一方、その頃地上ではベテラン刑事のク・イノ(ソン・ガンホ)が緊急招集をかけられていた。そのため彼は妻とのハワイ旅行をキャンセルせざるを得なかった。妻はKI501便に搭乗する。

イノ刑事は、飛行機へのバイオテロを予告するネット動画の捜査を開始。まもなくリュ・ジンソク(イム・シワン)という男が容疑者に浮上する。彼はKI501便に搭乗していた。

だが、その時すでにKI501便では1人の乗客が死亡。その後も、次々と乗客や乗員に異変が起こる。それはジンソクがばら撒いた致死性のウイルスによるものだった。ジンソクはまもなく機内で拘束される。

イノ刑事は何か要求があるに違いないと、電話でジンソクを問いただす。だが、彼はそんなものはないと言い、自らもウイルスに感染して死んでしまう。

さぁ、そこからはすさまじいハラハラドキドキ感の波状攻撃が開始される。まずはKI501便の機長が感染し、操縦不能になってしまうのだ。迷走し、急降下する飛行機。乗客は天井に叩きつけられ、悲鳴を上げる。これはもう墜落するしかないのか。破格の緊迫感がスクリーンを支配する。

また、機内では分断も起きる。感染した乗客は後部座席に集められ、それ以外は前方に集められる。ジェヒョクの娘も手に感染を示す発疹が現れてくる。ジェヒョクは「アトピーだ」と否定するが、疑心暗鬼に駆られた他の乗客たちは信じない。こうした分断は、現在のコロナ禍を踏まえれば絵空事とは思えない。圧倒的にリアルなのだ。

映像は地上の各所と機内を短いカットでつなぎ、おまけに全編で揺れる不安定な映像を駆使する。それもまた異様な緊張感を生み出すことに貢献している。

地上ではイノ刑事が、ある大手製薬会社が事件に関係していることを突き止める。そして、やがてウイルス治療薬の存在が明らかになる。その過程ではカーチェイスも登場するが、これまた車内にカメラを持ち込んで撮影するという迫力満点のシーンだ。

さらに終盤がすごい。KI501便は副操縦士のヒョンスが操縦し、まずはアメリカに着陸しようとする。国土交通大臣のスッキ(チョン・ドヨン)が対応に乗り出し、韓国政府がアメリカ政府に要請するが、未知のウイルスへの脅威からアメリカはこれを拒否。

続いて成田に着陸しようと、日本に要請をするがこれも却下。ちなみに、その際には自衛隊が、KI501便を撃墜しようとする場面まである。ひでぇな、自衛隊

いや、自衛隊だけではない。最後に韓国に着陸しようとしたKI501便だが、なんと世論が真っ二つに割れて行き場がなくなってしまうのだ。

うーむ、このあたりも現下のコロナ禍を考えると絵空事とは思えない。現実感たっぷりの出来事なのだった。

その後も異様な緊迫感が加速度的に増幅。ジェヒョクの過去も明らかになり、予想もしない終幕に向かってスリルが高まる。だ、誰か、止めてくれ!と叫びたくなるほどのスリリングなシーンの連続である。

まあ、とにかくこちらの予想を裏切り続け、結末も予想を超える展開。多少は首をひねるところもあるものの、それを意識させない緊迫感の波状攻撃だった。

ソン・ガンホイ・ビョンホン、キム・ナムギル、チョン・ドヨンら豪華キャストの共演も見もの。犯人役のイム・シワンのサイコっぷりも出色だ。

定番の飛行機パニックものに、ウイルスという要素を持ち込んで、ポリティカル・サスペンスなどの要素も加味。最初から最後まで緊張感が途切れない映画だった。おまけにコロナ禍という事情もあって、リアルさも半端ない。お正月からハラハラドキドキしたい人には、お勧めしたい映画である。

◆「非常宣言」(EMERGENCY DECLARATION)
 (2022年 韓国)(上映時間2時間21分)
監督・脚本:ハン・ジェリム
出演:ソン・ガンホイ・ビョンホンチョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン
丸の内ピカデリーほかにて全国公開中
ホームページ https://klockworx-asia.com/hijyosengen/

 


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