「春画先生」
2023年10月18日(水)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後3時35分より鑑賞(シアター2/d-9)
10月21日(土)に日比谷野外大音楽堂に出かけてきた。国際反戦デーの集会ではない。伊藤蘭のコンサートだ。今年のツアー最終日にふさわしい素晴らしいコンサートだった。観客の熱気もすごかった。私も思いっきりペンライトを振って声を上げた。終演後の夜風が心地よかった。
それとは関係なく、今日取り上げる映画は「春画先生」。春画といえばエロな浮世絵、と思っていると大間違い。近年は、その芸術的価値が見直されて注目を浴びているらしい。「春画先生」は、その春画を商業映画として日本映画史上初めて無修正で映したためR-15指定となった映画とのこと。
ただし、この映画、それ以外にもエロな場面がけっこうあるので、別に浮世絵を無修正で映さなくてもR-15になったのではないだろうか。
まあ、それはともかく「春画先生」というタイトルなので、文字通り「春画先生」こと春画の研究者・芳賀一郎(内野聖陽)が主人公かと思ったら、ドラマ的には春野弓子(北香那)が主人公。彼女の独白も使われている。
人生に疲れ、やりたいこともなく退屈な毎日を過ごしていた弓子が、バイト先の喫茶店で芳賀と出会う。芳賀に誘われて、春画を学ぶようになった弓子は春画の奥深い魅力にのめり込んでいく。同時に、授業料代わりに芳賀の家の家政婦をすることになったことから、芳賀に恋心を抱くようになる。だが、芳賀は7年前に亡くした妻のことが、今でも忘れられずにいた……。
この映画の最大の特徴は、春画の魅力を余すところなく伝えている点。春画を見る時には、性器ばかりに気を取られず見るべし。するとそこには様々なことが描かれている。その芸術性の高さこそが春画の魅力である。もちろん、そこにはエロスもある。猥褻にして風雅。それが春画なのだ。
というわけで、鈴木春信、喜多川歌麿、葛飾北斎などの作品が次々に登場し、春画の魅力を実例で示してくれる。劇中では、何やら珍妙な鑑賞会なども催されるが、あれは本当にあるのだろうか。あるならぜひ参加してみたいものである。
そんな春画の魅力に取りつかれた人々が演じるドラマは、早い話が弓子と芳賀のラブコメ。ただし、かなりひねったラブコメ。しかもエロ満載だ。
何しろ、芳賀のことが好きな弓子は、ひょんなことから芳賀が執筆している「春画大全」の完成を急ぐ編集者・辻村(柄本佑)と関係を持ってしまい、その時に自分が発した喘ぎ声が芳賀を喜ばせたと知ると、その後も何度も辻村などとエッチをし、その声を芳賀に聞かせるのである。
「そんなことねぇよ!」と思わずツッコミを入れたくなるが、メチャクチャだからこそ笑えるのだ。
その他にも、芳賀がかつて亡き妻とラブホテルで決行した「愛の七日間」の伝説など、聞いただけでおかしくなってしまうエピソードがテンコ盛り。
こんなふうにエロを絡ませつつ破天荒なドラマを展開させ、笑いの渦を巻き起こしていくのである。
極めつけは終盤。芳賀との距離がなかなか縮まらない中、亡き妻の双子の姉(安達祐実)が現れて、弓子と芳賀の関係に波乱をもたらしていく。
そんな中で、芳賀が貴重な春画を手に入れるため、弓子に人身御供になるよう要請する。弓子はその代わりに、芳賀に「愛の七日間」を再現することを約束させ、どこぞの屋敷に向かう。そこからは本作で最もエロい場面が繰り広げられる……と思いきや、安達祐実と北香那のSM合戦かよ!
もう爆笑ですな。降参です。何だ?このムチャクチャさは。
つじつまの合わないこともたくさんあるし、人間心理も深くは描かれない。それでもひたすら笑える、おおらかで明るい官能コメディだ。
こんなハチャメチャな映画を監督したのは誰かと思ったら、「黄泉がえり」「月光の囁き」などでおなじみのベテランの塩田明彦監督。この人、元々メジャーな映画とインディーズ映画を行き来しながら撮ってきた人で、初期の「害虫」などのインディーズ作品は私のお気に入り。本作もそうしたインディーズ映画の香りを感じさせる映画であった。
俳優陣のハジケた演技もこの映画の魅力。内野聖陽は「きのう何食べた?」とは全く違う演技を披露。北香那はその演技を初めて見たが、なかなかの頑張りだった。柄本佑のブーメランパンツにも爆笑。そしてそして、安達祐実。童顔のSMは禁断の技です(笑)。
◆「春画先生」
(2023年 日本)(上映時間1時間54分)
監督・脚本・原作:塩田明彦
出演:内野聖陽、北香那、柄本佑、白川和子、安達祐実
*新宿ピカデリーほかにて公開中
ホームページ https://happinet-phantom.com/shunga-movie/
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