「ドミノ」
2023年10月29日(日)TOHOシネマズ 池袋にて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン7/D-12)
~え? まさか? ロバート・ロドリゲス監督が仕掛ける大どんでん返し
ロバート・ロドリゲスは、ド派手なアクション映画のイメージが強い監督だ。「デスペラード」「マチェーテ」「プラネット・テラー in グラインドハウス」「シン・シティ」「スパイキッズ」「アリータ バトル・エンジェル」など様々な作品を撮っているが、いずれの映画もケレン味にあふれたアクションが見られる。
そのロドリゲス監督の新作「ドミノ」は派手なアクションシーンもあるものの、今までの作品にはなかった新機軸を打ち出してきている。
主人公は刑事のダニー・ローク(ベン・アフレック)。公園で一瞬目を離した隙に娘のミニーを誘拐され、その悲しみからカウンセリングを受けるようになる。
冒頭はそのカウンセリングの場面。いきなりロークの目のアップからスタートする。この映画、アップを効果的に使った映像が印象的だ。
カウンセリングの結果、ロークは職場に復帰することになる。すぐに相棒が駆け付け、銀行強盗を予告する匿名の通報を受けたことを知らせる。現場に向かったロークは、娘の失踪に関係していると思われる謎の男(ウィリアム・フィクトナー)と遭遇する。
というわけで、このあたりまでは刑事サスペンス風な展開。すっかりそういう映画だと思い込んでしまったのだが……。
驚くことに謎の男は、なんと簡単に周囲の人たちを操ることができるのだ。しかも、ロークに追い詰められてビルの屋上から飛び降りたものの、その姿が忽然と消えたのだ。なんだ? この男。
男を取り逃がしたロークは、匿名の通報者の居場所を探り当てる。それは、ダイアナ(アリシー・ブラガが)という占い師の女性だった。ダイアナによれば、ロークの追う男は相手の脳をハッキングすることができると言う。
まあ、つまり強力な催眠術の使い手のようなものだろう。だから、彼は「絶対に捕まらない」わけだ。ダイアナもその能力があるが、男に比べて圧倒的に弱い。そして、ロークはなぜかそれをブロックすることができるという。
オイオイ、そりゃ都合のよすぎる設定じゃないか。と思わないでもないが、とにもかくにもロークとダイアナは、当局の陰謀によってお尋ね者となり逃亡する。その旅の途中で、様々な怪しい協力者が出現して、2人を助ける。
最初は刑事サスペンス風だった物語は、こうして超能力を織り込んだ予想外の展開に雪崩れ込む。
そこでは、不思議なことが起きる。鉄道の操車場で敵から逃げるロークの頭上では、地平がぐにゃりと曲がって空を覆う。何だか見たような光景だと思ったら、クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」もこんな感じだったではないか。
虚構の世界と現実が入り乱れて、謎が謎を呼ぶ展開が続く。ハラハラドキドキ度はかなりのもので緊張感が途切れない。アクションも適度に盛り込まれる。多少強引なところや、つじつまの合わないところもあるが、まあしょうがないか。
と思ったら、ドラマの中盤でとんでもない種明かしがされるのだ。
え? そうだったの? でも、それは反則では? と思わせるほどの意外性。そこまでのドラマが根底からひっくり返る。同時にこれまで強引だったり、つじつまが合わないと感じていたところが、伏線として見事に回収されるのだ。
しかし、こんな大きな種明かしを中盤でしたら後はどうするの?
そんな心配はいらなかった。再び始まる逃走劇。今度はローク一人だけで逃げまくる。その果てにラストでまたしても用意されている大どんでん返し。いや、まったく、よくやるよ。
どんなどんでん返しが用意されているかは秘密にしておくが(それをバラしたらこの映画の面白さがなくなるから)、エンドロールの途中でもどんでん返しが仕掛けられているので、最後まで席を立たないように。
ある意味、現実味という点ではゼロともいえるこの映画に、説得力をもたらしているのは、ベン・アフレックが演じているからだろう。そして、謎の男のウィリアム・フィクトナーの不気味さも出色。占い師役のアリシー・ブラガも存在感を発揮していた。
ロドリゲス監督は、アルフレッド・ヒッチコックの「めまい」に影響を受けて、この映画を構想したという。テーマそのものはけっして珍しいわけではないが、二転三転する展開にはとにかくびっくりさせられる。どこかB級映画テイストが漂うのもロドリゲス監督らしいところかも。
◆「ドミノ」(HYPNOTIC)
(2023年 アメリカ)(上映時間1時間34分)
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ベン・アフレック、アリシー・ブラガ、J・D・パルド、ハラ・フィンリー、ダイオ・オケニイ、ジェフ・フェイヒー、ジャッキー・アール・ヘイリー、ウィリアム・フィクトナー
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームページ https://gaga.ne.jp/domino_movie/
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