映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

ネクスト・ゴール・ウィンズ」
2024年3月6日(水)グランドシネマサンシャインにて。午後1時40分より鑑賞(スクリーン8/e-6)

~定番のスポーツ物語だが、期待通りにきっちり笑わせて感動させてくれる

最初に、すでに取り上げた映画についての話題を2つ。

その1
「落下の解剖学」で回想シーンは1つもないとジュスティーヌ・トリエ監督が言っているそうだ。ということは、あのクライマックスのシーンも、回想ではなく「もしかしたら」という誰かの思い込みかもしれず、だとすればなおさら怖い映画だと思った次第。

その2
「ソウルメイト」をもう一度鑑賞した。前回観終わってそれほど時間が経たないうちにレビューを書いたつもりなのに、細かな勘違いの箇所があって驚いた。私の記憶はザルか(笑)。2回目を観て感じたのは、オリジナル版に比較的忠実ではあるものの、細かなアレンジを加えたことによって、女性の生きづらさとそこからの解放というテーマが、よりクッキリと浮かび上がったこと。何よりオリジナルの小説を「絵」に変えたことで、さらに情感が高まった。あの絵はミソとハウンの共同作業だったのねぇ~。

 

さて、今日取り上げるのは、米領サモア(独立国のサモアとは違う)の弱小サッカーチームが、型破りなコーチの指導で変わっていく様子を描いたドラマ「ネクスト・ゴール・ウィンズ」だ。

実話もとにした話だが、話自体は特に珍しいものではない。弱小スポーツチームが上を目指すという映画は「クール・ランニング」などたくさんある。しかも、この話は2014年に「ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦」というドキュメンタリー映画になっている。

それでも、「ジョジョ・ラビット」「ソー:ラブ&サンダー」などのタイカ・ワイティティ監督が、あれこれ工夫して見応えある作品に仕上げている。ワイティティ監督はポリネシア地域にルーツがあるそうで、そういう意味でも思い入れがあるのだろう。

映画の冒頭、地元の神父が、これがどんな物語であるかを簡潔かつユーモラスに説明する。そこでは実話であるのと同時に、かなり話を盛っていることも告げられる。つまり本作は実話をもとにしつつも、大胆にフィクションを組み込んだエンタメ映画なのである。

2001年、ワールドカップ予選でオーストラリア相手に0-31という大敗を喫して以来、1ゴールも決められていないアメリカ領サモア代表。次の予選が迫る中、外国人監督の起用を決断する。やって来たのは破天荒な性格でアメリカを追われた鬼コーチ、トーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)。チームの立て直しを図ろうとするロンゲンだったが……。

全編に笑いがあふれた映画だ。何といってもキャラが濃い。鬼コーチのロンゲンは、破天荒な性格で怒ると何をするかわからない。おかげでチームを何度もクビになり、今またクビを宣告された。その席で「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」という5段階の通りに感情を発露するロンゲンが面白い。

彼に選択の余地はなく、米領サモアのコーチを嫌々引き受ける羽目になる。つまり、最初からあんまりやる気がないのだ。

ちなみに、彼の奥さんは別居中でサッカー協会のお偉いさんとつきあっている。この設定も、ドラマに起伏をもたらしている。

個性派コーチ、ロンゲンに負けず劣らず米領サモアの選手たちもユニークだ。トランスジェンダーの選手や超太っちょの選手など、いずれもキャラの立つ選手ばかり。彼らの一挙手一投足が笑いを誘う。

そして選手たちは何事にも大らかだ。楽しくサッカーをやるのがモットーで、ガツガツと練習したりはしない。お祈りの時間にはすべての行動をストップするという習慣の違いもある。そこにロンゲンが入り込むのだから、これはもう騒動にならないわけがない。

こうして、ロンゲンと選手たちはぶつかり合い、すれ違い、心が離れていく。チームはバラバラになってしまうのだ。

ところで、劇中でロンゲンが時折、留守番電話に録音された声を聞くシーンがある。女性の声だが別居中の妻ではないようだ。観ている途中では訳がわからなかったのだが、実はこれが後になってロンゲンの過去につながることがわかる。

しかし、まあ、バラバラになったままでは物語は進まないわけで、あれこれ問題をはらみつつも、ロンゲンと選手たちは少しずつ距離を縮めていく。その様子をテンポよく描いていく。前半に比べて笑いは控えめだが、それでも軽快なタッチは変わらない。

そしてやってくるクライマックスはもちろん試合のシーン。ワールドカップ予選で宿敵トンガと対戦するのだ。はたして米領サモア代表は、悲願の1得点をすることができるのか。

その結果は伏せるが(というか、もうわかっちゃってる話だけどね)、その試合途中でも波乱がある。ロンゲンが怒りまくってブチ切れて、チームを離脱すると宣言するのだ。しかし思い直して戻ってきた彼は、自身の過去にあった悲劇について語る。そこで例の留守番電話の謎が明らかになる。ここは素直に感動できるシーン。

その後突入した後半戦。ここでも劇的に盛り上げる工夫をしている。サッカー協会の会長が試合途中に熱中症で倒れ、気がついた時には試合が終わっていた。結果はどうなったのか、と気をもむ彼に息子(選手)が経過を説明するのだ。

こうしてカタルシスがもたらされた後、さりげなく後日談をはさみ、さらに今度はノンフィクションの世界に戻って、実際のチームの映像やその後、彼らがどうしているのかを綴る。というわけで、最後の最後まで観客を楽しませる工夫を怠らない。

ロンゲン役のマイケル・ファスベンダーは、「それでも夜は明ける」「スティーブ・ジョブズ」などシリアスな役のイメージが強いが、こういうコメディもけっこう合っている。

サッカー協会会長を演じたオスカー・ナイトリー、ロンゲンの元妻を演じたエリザベス・モスも好演。サッカー選手たちを演じた無名の役者たちの演技も光る。特にトランスジェンダーの選手ジャイヤ・サエルアを演じたカイマナの演技はなかなかのもの。ワイティティ監督自身も出演しています。

結末はわかっているのに、最後まで飽きずに観ることができた。期待通りにキッチリ笑わせて感動させてくれる。これぞエンタメ映画。たまにはこういう映画もいいものだ。

◆「ネクスト・ゴール・ウィンズ」(NEXT GOAL WINS)
(2023年 イギリス・アメリカ)(上映時間1時間44分)
監督・製作・脚本:タイカ・ワイティティ
出演:マイケル・ファスベンダー、オスカー・ナイトリー、デヴィッド・フェイン、ビューラ・コアレ、レイ・ファレパパランギ、セム・フィリッポ、ウリ・ラトゥケフ、レイチェル・ハウス、カイマナ、ウィル・アーネット、リス・ダービー、タイカ・ワイティティ、エリザベス・モス
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームページ https://www.searchlightpictures.jp/movies/nextgoalwins

 


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