映画貧乏日記

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。

「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」

「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」
2024年7月24日(水)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後7時より鑑賞(シアター2/C-5)

~アルモドバル監督流の西部劇はサンローランとのコラボで上映時間31分!

 

お盆で帰省したり(両親はすでに他界しているが)、台風が来たりで、ここのところ映画館に行けなかったので、このへんで以前観たもののまだアップしていなかった短編映画の感想を……。

月に一度、映画の会を催している。といっても、ただ映画を観てそのあとに飲むだけなのだが、平日夜の上映後に飲みに行くので、どうしても帰りが遅くなる。家に着くのは11時半過ぎということも珍しくない。若者ならまだしも、おっさんにとってこれはツライ。

そこでダメもとで先月は短編映画を提案してみたら、これがなんとまあ採用されてしまった。スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」だ。メゾンとして初めて本格的に映画製作に参入したイヴ・サンローランの子会社サンローラン・プロダクションズが製作に参加した作品。上映時間は何と31分!

1910年。保安官のジェイク(イーサン・ホーク)のもとを、旧友のシルバ(ペドロ・パスカル)が訪ねてくる。2人は、若き日に雇われガンマンとして一緒に働いていた。25年ぶりの再会である。若かりし頃を懐かしみつつ酒を酌み交わし、再会を祝う2人。だが、翌朝、ジェイクは前日とは打って変わり、シルバがここへ来た本当の目的を探ろうとする……。

いわばアルモドバル流の西部劇だ。基本は伝統の西部劇。保安官、流れ者、お尋ね者、そして三すくみの銃撃戦と見せ場はたっぷり。アルモドバル監督は、もしかしたら西部劇のファンだったのだろうか。

とはいえ、そこにアルモドバル流の味付けもなされている。それは同性愛的な要素だ。メキシコ出身のシルバとアメリカ出身の保安官のジェイク。2人はかつての旧友で同性愛的な関係にあったのだ。それが突然の再会で焼け木杭に火が付く。

だが、性格も対極の2人は、やがて対立へと向かう。ジェイクはある人物を殺人の疑いで追っていた。それはシルバとかかわりの深い人物だった。それをきっかけにクライマックスへと突入し、緊迫の場面が訪れる。そして……。

ラストのシルバのひとことは何を意味するのか。過ぎ去った日々への追憶? 来るべき日々への希望? 

エンドロールで映る柵の中の馬たち。あれは彼ら自身を投影させたものかもしれない。逃れられない運命を背負ってこの地にとどまるという……。

イーサン・ホークがしぶい。厳格で冷徹な保安官を好演している。一方のペドロ・パスカルも、西部劇の登場人物らしい造形。

サンローランのクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロが担当した色鮮やかな衣装も見どころだ。

2人の男の愛と葛藤を濃密に描いたこのドラマ。いかにもアルモドバル監督らしい作品といえるだろう。しかし、31分はやっぱり短いよなぁ。ここから何かが始まりそうなところで終わっちゃうんだから。

アルモドバル監督が短編を手がけるのはティルダ・スウィントン主演の「ヒューマン・ボイス」(2022年)に続いて2作目。特に意図したものではなく、たまたま短編になったということかもしれないが、それでも31分の映画に相当な金をかけられるのは巨匠ならでは。

ちなみに短編映画だったので、映画後の飲み会は当然いつもより早く始まったのだが、やっぱり遅くなりそうだったので途中で抜けて一足先に帰ってきた。やれやれ。

◆「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」(EXTRANA FORMA DE VIDA)
(2023年 スペイン・フランス)(上映時間31分)
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:イーサン・ホークペドロ・パスカル、ペドロ・カサブランク、ジョゼ・コンデサ、マヌ・リオス、サラ・サラモ、オイアナ・クエト、ダニエラ・メディーナ、ジョージ・スティー
*新宿シネマカリテほかにて公開
ホームページ https://www.hark3.com/strange/

 


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